かけがえのないキミへ
綾音にとって携帯は必需品なのだろう。きっと。綾音の声を聞きたいけれど、そんなの無茶な話だ。
綾音が携帯を俺に見せてくる。
《楽しかったよ。怜は彼女さんとラブラブだね》
悲しい文字が並んでいる。俺はその文字を見ては、苦笑いしか出来なかった。
『そうかな?普通だよ』
《私にはすごくお似合いに見えるよ》
更に悲しい言葉。
綾音からそんな言葉など聞きたくなかった。
俺はうっすらと笑みを浮かべたまま、視線をエビドリアに移した。
半分残っているエビドリア。
胸が苦しくて食べられそうにもない…。
突然、瞳に映った綾音の細い指。
テーブルをとんとん、と人差し指で叩き、俺を呼んだ。
視線をまた綾音に向けると、綾音の携帯には、また俺を悲しくさせる文字が映し出されていた。
《幸せになってね》