かけがえのないキミへ
別にいいんだけどさ。
俺はソファーにドサッと横になり、詰まっていた息を思い切り吐き出した。
その息は透明で見えないが、きっとあの親父の煙草のように、もくもくと立ち上っているのだろう。
ソファーに染みついたSevenStarsの香り。
久しぶりに見た親父の顔。
何年ぶり?かな。
って考えたら、思い出せなかった。
それだけ会っていないということ。
『何も変わってなかったな…』
親父の顔…何も変わっていなかった。
あの頃のまま。
無精髭や、あの笑顔。
『まぁいいや…』
なんか考えるのがめんどくさくなってきた。
するとリビングの床に放置されていたカバンの中から、音楽が聞こえてくる。
すぐ携帯が鳴っているのだろうと気づいた。
俺は手を思い切り伸ばし、カバンを取る。
そしてカバンから携帯を取り出した。
『ったく誰だよ』
もう9時過ぎだぞ?