かけがえのないキミへ
俺はその携帯をしばらく見つめたまま、立っていた。
すると携帯が突然歌うのを止めて、部屋がシーンとなる。
相変わらずピカピカと一定の速度を保ったまま光る携帯。
『綾音…の携帯だよな?』
携帯を手に取って、綾音のかどうか、見る。
このピンク色の携帯は綾音のだ。
綾音のしか有り得ないのだけど。
『忘れたのかな?まずいじゃん…』
ハッと何かに気がつく。今俺の手にあるのは綾音の携帯。
綾音は、声が出ない。
話すときはいつも携帯で文字を打つ。
だが今携帯はここにある。
綾音は携帯を持っていない。
じゃあ今日、話すことが出来ないということになる。
俺はそのことに気がついて、慌てて綾音の部屋から出て行った。
そして自分の部屋に戻ってクローゼットの中から夏服の青色のカッターシャツを取り出して、スエットを脱いで、タンクトップを着てカッターシャツを着る。