かけがえのないキミへ


俺は曖昧な返事をするに決まっている。


『どうかな?』



『あたし怜を彼氏にしたいんだけど…だめ?』


俺はジュースを一口飲んで、梨花を見つめた。
たちまち梨花の頬は赤くなる。
女はみんな同じなんだな。



『お好きにどーぞ?』



また俺は過ちをする。
梨花をその気にさせてしまった。
本当は嫌なのに…


『本当に?じゃあ怜はあたしの彼氏ね?』



俺はこの問いかけを無視した。
頷いたりでもしたら、
誰かに『彼女?』と聞かれたら、『うん』って言わなくてはならないから。


そんなの、嫌だ。



俺達はファーストフード店から出て行き、ぶらぶらと街を歩いていた。
右手には梨花の左手が繋がっている。


梨花から伝わる温もりが温かくて、俺をだめにする。



『怜、キスしてよ?』


あまり人気がない狭い道路で梨花が俺を求めてきた。



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