かけがえのないキミへ
『ここなら人いないから、ね?』
上目使いで俺を見てくる。
加奈と同じ言葉を俺に言ってくる。
『…出来ないよ』
『何で?怜なら出来るでしょ?』
梨花はこう言って、目を閉じた。
俺はため息を漏らし、髪の毛を掻いた。
キスは出来ない。
俺は人差し指を立てて、梨花の唇に当てた。
梨花は『へ?』と間抜けな声を出して再び俺を見上げる。
『また今度ね?』
俺はこう言って、梨花の手を引っ張って、賑わしい道路へと出た。
後ろでは梨花が拗ねていたが、俺は笑顔で誤魔化して、なんとかその場を切り抜けた。
『じゃ、バイバイ』
駅に着き、梨花を見送る。
梨花は寂しそうな顔を見せている。
梨花の頭を撫でると、梨花に笑顔が戻り、元気よく手を振って電車に乗り、俺の前から去って行った。