かけがえのないキミへ


遥斗さんからもらった名刺には、名前と電話番号とメールアドレスが書いてある。
俺はそれを大事にしまい、上を向いて歩いていく。


『怜!!』


『遥斗さん…』


後ろから、遥斗さんの声が聞こえてきた。
俺は後ろを振り返る。


『泣きたくなったら、空を見ろ!空はどこまでも繋がってるから』


遥斗さんの言葉を聞いた俺の瞳から、涙が出そうになった。


『はい!見上げます、空を…』


辛くなったら空を見よう。
この言葉が深く俺の心に刻み込まれた。



…マンションに着いた頃は、昼過ぎだった。
どうりでお腹も空くわけだ。
遥斗さんとの出逢いがまだ信じられないでいた。

鍵を挿して、部屋の中に入る。
ふと足元に視線を落とすと、玄関には、綾音がいつも履いている靴と、男ものの靴が綺麗に並べられていた。


『誰かいんの?』


靴を脱いで、一歩、一歩、部屋の奥に進んでいく。
すると綾音の部屋のドアが開いていた。
その中には、あいつがいた。



『怜、おかえりー』



『…竜也…』




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