かけがえのないキミへ
綾音の部屋からひょいっと顔を出して、俺に挨拶をする。
俺は理解が出来なくて、その場に立ちすくんでいた。
『なんで…?』
『彼氏が彼女の家来て、なにがおかしいんだよ』
竜也はこう笑いながら言って、顔を引っ込めた。綾音の部屋を覗くと、ベッドの上にちょこんと綾音が座っている。
床には2つのグラス。
落ちた水滴が水たまりのようになっている。
『そっか、ゆっくりしてけよ…』
『さんきゅ!』
綾音の目が見れなくて。俺は竜也に思ってもいない言葉を投げかけた。
綾音は今どんな顔をしているのだろう?と、気になったりもしたが、今の俺には無理だった。
すぐに隣の部屋にある、自分の部屋に逃げ込む俺。
ドアを思い切り閉めて、その場にしゃがみこんだ。
真っ暗な部屋。
グレーのカーテンが、余計に部屋を暗くする。
俺の心のよう…