かけがえのないキミへ
最後に遥斗さんが言った言葉。
俺は顔を上げて、暗い部屋を眺めた。
『空を…』
うっすらと見える太陽。俺はそれを真っ直ぐに見つめた。
そして立ち上がり、窓のところへ歩いていく。
すると、隣の部屋から笑い声が聞こえてきた。
竜也の笑い声。
俺の足が止まる。
綾音の部屋がある場所にへと顔を傾けた。
目に映るのはただの壁。その奥に繋がる、綾音の部屋。
俺と綾音の距離は、数センチ。
この数センチの壁が、俺と綾音を引き裂いていた。
窓から壁へと向きを変えて、一歩、歩み出た。
竜也の声が、竜也の笑い声が、再び俺を苦しくさせる。
なに話してるの?
なにしてるの…?
気になってばかりだ。
壁に手を当てて、涙を流した。
先ほどより、速いスピードで。
溢れだす涙は、次々と、床を濡らしていく。
まるで、綾音の部屋にあった2つのグラスのように。