かけがえのないキミへ
暗い部屋にドアを開けたことによって、明るい光が入ってきた。
俺の進むべき道のよう。
そして俺は綾音の部屋のドアノブに手を掛けて、一呼吸する。
『なぁ、綾音?』
平然を装って、いつものような態度を見せながら綾音の部屋のドアを開けた。
本当は、心臓がはちきれそうなほど、緊張していたのに…
『…え…』
綾音の部屋を見た俺は、茫然としてしまった。
『怜、俺帰るわ!』
俺の視界に映った光景は、慌てて帰る支度をする竜也と、それを見守る綾音の姿があった。
てっきり俺は…竜也が綾音を襲ったのだと思っていた。
『え…なんで?』
『なんか兄ちゃんが帰って来いってメールがあってさ。また来るわ!じゃあね、あやちゃん!怜も!』
竜也は俺の肩にぽんっと手を置いて、俺たちのマンションから出て行った。
まだ部屋には竜也の香水の香りが残っている。