かけがえのないキミへ


人は強がってばかりだ。本当の気持ちを自分の中にしまい込んで、嘘の言葉を吐き出す。

本当は悲しいのに、悲しくない、と言ったり、
辛いのに、辛くない、と言ったり。

近くにいる人を頼りたいのだけど、それが出来なくて、必死になってもがき苦しんでいる。
それが俺や綾音だった。

『なにかあった?竜也になんか言われた?』


綾音の涙を見ていると、胸がぎゅっと苦しくなる。
綾音を見て、ドキドキするときとは違い、何もしてあげられない自分が惨めだから、苦しくなるのかもしれない。


綾音は、甘えたいんだ。誰かに…誰かに、甘えたいんだ─…



『…綾音、おいで』


俺は綾音の手を引っ張って、ベランダへと向かった。


綾音に、涙なんか似合わない。
綾音には、笑顔が一番似合う。


綾音、ほら…笑ってよ?


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