かけがえのないキミへ
俺はまだ知らなくていい。隣で喜ぶ綾音の姿を見ているだけで、俺は幸せです。
綾音は、一歩前に進んで、ベランダの手すりに手を掛けた。
なにかに感動するような表情を見せる綾音は、しばらく空を見上げたままだった。
『なにか、見えた?』
綾音の瞳からは涙がもうなくなっていた。
涙を流すことすら忘れちゃうほど、いいものだったの?
ゆっくりと綾音の顔がこちらに向いてくる。
俺は綾音が安心するように笑顔を向けた。
綾音も笑顔になってくれる。
やっぱり、キミは笑顔が似合うよ。
綾音の頭をぽんっと触って、さらさらの髪の毛を撫でる。
もう止まらない。
加速し続ける…
《素敵なプレゼント、ありがとう》
綾音が俺に見せてきた携帯に、この文字たちが映っていた。
気に入ってくれたみたいだ。
俺は綾音の手を引いて、もう一度綾音を抱きしめた。