かけがえのないキミへ
何度温もりを感じても、物足りなくて、またキミを求めてしまう。
梨花にはこんなふうにはならなかったが、綾音にだけは必ずなる。
綾音が好きだという証拠。
それ以外理由はない。
綾音は抵抗などしず、素直に俺に抱かれる。
17階のベランダで、誰かに見られているかもしれないのに、罪悪感が襲ってきているのに、止まらない俺の欲情。
見せつけてやりたい。
『こんなにも綾音が好きだ』って。
世界中の奴らに。
俺の愛を…
綾音の肩を掴み、ゆっくりと綾音を自分から離す。
見つめ合う二人。
俺は顔を傾け、綾音に近付いていく。
綾音の瞳に吸い込まれるように、俺は顔を近付けていく。
キミとの距離は、あと数センチ…
…─ピーンポーン。
だけど現実はそんな甘くない。
部屋中に響き渡る、インターホンの音が、俺に悪戯をした。
『…いいとこだったのに…』
俺は軽く舌打ちをして、ベランダから出て、モニターを見た。
モニターに映っていた人は、知らない人だった。
『…だれ?』
『綾音の母親よ』