かけがえのないキミへ
自分の目を疑った。
モニターに映っている人が綾音の母親?
髪の毛をアップにし、派手な格好をしている。
一番目がいく場所は、真っ赤な口紅を塗った唇だ。
これが?
想像していたイメージと全然違った。
綾音の母親は、もっと落ち着いた感じで、優しそうな人だと思っていたから。
『開けてくれるかしら?』
髪の毛を掻きながら、
怒った口調で母親は話してくる。
俺はベランダにいる綾音の方に顔を傾けて、綾音の母親が来た、と知らせる。
『綾音、お母さんが来たみたいだけど』
俺がこう言うと、綾音は目を見開いて、首を激しく横に振った。
『綾音…?どうか…した?』
綾音に聞いても綾音は首を振るだけで何も答えてくれない。
そして綾音は耳を押さえて、綾音の部屋の中に逃げ込んでしまった。
いきなりの綾音の変化に戸惑いを隠せないでいる俺。
『開けて頂戴?』