かけがえのないキミへ
モニターの中では早く開けろと俺を急かす、綾音の母親がいた。
俺は仕方なく、マンションの入り口を開ける。
『どーぞ』
綾音が心配で、素っ気なく対応すると、いつのまにかモニターから姿が消えていた。
真っ暗になったモニターをそのままにしておいて、俺は綾音の部屋に向かう。
ドアを開けようとすると鍵が掛かっていて、こちらからは開かない。
ノックをして綾音を呼びかける。
『あ、綾音?どうかした?』
問い掛けても、当然返事などない。
綾音は声が出ないから。
少ししてから、再びインターホンが鳴った。
来客はあの人。
それしか考えられない。
俺は仕方なく、部屋の前から立ち去り、マンションの鍵を開けた。
ドアの向こうには、綾音と同じぐらいの身長をした、モニターより派手に見える、綾音の母親が立っていた。
『初めまして、怜くん』
『どーも…』