かけがえのないキミへ


『そこであなたのお父さんと出会ったのよ。今は仕事してないけどね』


『そっか…』


俺は理解しようと必死だった。
理解しなくてはいけない。
まだまだ綾音を知らな過ぎる。


『綾音はなんで声が出なくなったんですか?』



知りたい、綾音を。
知りたい、綾音の全てを。
綾音の過去を、俺は全てを知ってから綾音を幸せにする─…



『知りたいの?…いいわ、長くなるかもしれないわよ?全部聞いて怜君は何を思うかしらね?』


真っ赤な唇からちらっと見える白い歯。
俺はごくんと生唾を飲んで、耳を傾ける。


もし、俺が綾音の全てを知って、綾音から心が離れてしまうことがあるならば、俺は人を愛す資格などないだろう。

愛する人の過去までも、愛さなければ、それは本当の愛にはならない。


綾音の全てが知りたいだけなんだ。

傷ついた心を、ただ、
癒やしたいだけなんだ。


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