かけがえのないキミへ


よくある喧嘩だと思っていた。
いつか幸せになると思って耐えていた。
頭の中に駆け巡る言葉は、昔夫が私に言ってくれた優しい言葉だった。

『幸せにする』
幸せなんかじゃなかった。

『綾音と三人で、幸せな家庭築こうな』
ちっとも約束守ってくれなかった。


『ずっと一緒だから』
もう明るい未来なんかない。


私は涙を流しながら、夫の暴力に耐えている日々を送っている。
なにが幸せよ?
なにが未来よ?

私は幸せになってはいけないの?


『ママ…』


するとどこからか、小さな可愛らしい声が聞こえてきた。
ゆっくりと目を開き、上を見上げると、私が綾音の誕生日にあげたクマの人形をぎゅっと握った、綾音がいた。

まるで信じられない光景を見るかのような表情をして立っていた。


…綾音には見られたくなかった…こんな母親の姿を─……




この次の瞬間なのかもしれない、綾音が声を失ったのは…



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