かけがえのないキミへ
そのシャボン玉は、時計台に当たり、儚く消えてしまった。
キミはシャボン玉の蓋を閉め、カバンの中にしまった。
そして立ち上がり、その場を去ろうとした時、俺はキミの手を握り、真っ直ぐに見つめた。
驚いた表情を見せているキミが可愛くて、離したくないと思ってしまう。
『キミと話がしたいんだ』
こう俺が言うとキミは顔を真っ赤にして、唇をぎゅっと噛み締めた。
怖がってるの?
怖がらなくていいよ。
俺はもう一度キミを隣に座らせ、自己紹介をする。
『俺、聖華高校三年の城谷怜!よろしく』
キミを安心させるように、白い歯を見せて笑顔で言った。
キミはなんとか安心してくれたようで、にこりと笑った。
こんな顔をして笑うんだ…なんて嬉しくなってしまった自分がいた。
空には三日月がぽつんと浮かんでいて…
どこか寂しそうだ…