かけがえのないキミへ


なんでもっと前に進まなかったのだろう?
進む道は前から決まっていたのに。
もしかしたら、周りの人を傷つけたくないと思っていたから、今になってしまったのかもしれない。

結局は、傷つけてしまうのに、俺は何うじうじとしていたのかな…


視線を下に落とし、唇を噛み締めた。
昨日、加奈と先生にサヨナラを告げた。
今日は梨花だ。
昨日の電話で梨花はとても嫌がっていた。
もしかしたら納得してくれないかもしれない。

だけど俺はちゃんと言う。


素直なままに─…
自分の気持ちに素直になって…
自分の体に素直になって…


前へと進む。



『おし!』


俺は立ち上がって、タオルケットをベッドに投げた。
そしてリビングに行く。そこにはキミがいて、夢のようになって欲しいと密かに願っていた。


『おはよ、綾音』


その願いが叶うのは、
まだ先のようだ─…



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