かけがえのないキミへ
綾音に挨拶をすると綾音はいつもと同じように、声のない『おはよう』と言った。
でも俺はこの時思ったんだ。
綾音に声がなくてもいいと。
太陽に負けないくらい眩しい笑顔を見せてくれるだけでいいんだ…
ふとリビングにある時計を見ると、時計の針は、もうすぐで8時になろうとしていた。
『もう8時?』
俺は慌てて洗面所へと行って、顔を洗い、髪の毛をセットした。
そして再びリビングに向かう。
『綾音、今日学校行くの遅いね?』
綾音がこんな時間まで家にいるのは珍しい。
質問しても綾音はなにも答えてはくれない。
俺は朝食を無理矢理押し込んで、カバンを取り、急いで学校に向かう。
『じゃあ、行ってきます』
今日失うものは、梨花だけだと思っていた─…
走って学校に向かっていく。
梨花に話を早くしたいから。
校門に近づくと、ブロンドの髪をした女の子がいた…
あいつがいた。
『樹里…?』
『遅いじゃない、梨花は教室にいるわ』
…どういうこと?