かけがえのないキミへ


するとどこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
やはりいつもよりは低めの声で、俺は違和感を感じる。


『…梨花…』


視線の先には微笑む梨花の姿があった。
いつもより違うのは、声だけではなかった。
さっきまで泣いていたような、腫れぼったい目に、ボサボサの髪の毛。
まるで今から話すことを事前に知ってしまったかのよう。


『樹里、もういいわ。ありがとう』


『はい…』


この二人のやりとりを見ていても、意味が分からなかった。


『梨花、樹里とどういう関係なんだよ?』


すると梨花は怪しく笑って、俺に一歩近付いた。そしてゆっくりと口を動かす。


『スパイ…って言った方がいいのかな?』


『…スパイ…は?誰をスパイすんだよ?』



『分かるでしょ?怜なら…』



その瞬間、背筋に寒気が走った。
もしかして…綾音…?



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