かけがえのないキミへ


今の俺には迷いなど微塵も感じない。


『俺は、綾音が好きだ…』


セミの五月蝿い鳴き声が響き渡る世界の中、俺は素直になっていた。
素直になるのは時々難しいときがある。
だけど今の俺は大丈夫だ。自分でも分かる。


『…なん…で…綾音ちゃんなの?』


とうとう堪えきれなかった涙が頬を伝っていき、熱くなったアスファルトの上に落ちていった。


『守りたいから。俺、綾音を幸せにしたいんだ』


梨花を真っ直ぐに見つめて言うと、梨花は俺に近寄ってきて俺のカッターシャツを両手で掴んだ。
ひらひらと落ちていく俺と綾音のツーショット写真。
俺はそれらを横目で見ていた。


『あたしを…あたしを幸せにしてよ!!あたしずっと前から怜が好きだったんだよ?なんでいきなり出てきた綾音ちゃんを幸せにするのよ……』




梨花の言葉は、
俺には届かない─…



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