かけがえのないキミへ
~終.かけがえのないキミへ~
セミの鳴き声があちらこちらから聞こえてくる。もうそんな時期なのか、と時の経過が速いのを改めて気付かされる。
偽りの恋は終わった。
俺は素直なまま生きていく。
素直なままに─…
それが一番だ。
『竜也ってもう学校に来てる?』
俺は梨花と下駄箱に向かっていた。
梨花の目は少し赤くなっていた。
俺がこんなふうにしてしまったのだ。
胸の奥がちくりと痛く感じる。
『まだ来てなかったよ?』
ぐすん、と鼻を啜りながら、梨花は俺を見上げた。
『珍しいな…』
竜也はたいていこの時間には学校にいる。
それにあまり学校を休まない。
遅刻は多かったが、なにか理由がなければ休む奴ではない。
俺は不思議に思い、携帯をズボンのポケットから取り出した。
そして着信履歴から竜也の名前を探して、発信ボタンを押す。
少し経ち、携帯から発信音が鳴った。