かけがえのないキミへ


綾音がいないことを親父に伝える。
親父は言葉を失ったかのような、漏れる声で小さく『え?』と言った。


『朝…出てって、帰ってきたらいなくて…ホワイトボードに迷惑かけられないって…』


涙を手で拭いながら、親父に事の説明をしていく。
親父は黙ったまま俺の話を聞いていた。


《俺のところには来てないぞ。あいつは今仕事だし…どこかにいるんじゃないのか?好きな場所とか…》



『好きな場所?』



綾音が好きな場所ってどこなんだ?

こう考えていたらある場所を思い付いた。


『時計台…?』


もしかしたら、と思った。
時計台にいるかもしれない。
いつもあそこにいたから。
だけどさっきまで俺は時計台の近くにいた。
その時、綾音の姿なんて見ていない。
もし見ていたら、俺はすぐに綾音の場所に向かっているだろう。


もう…分からないよ…



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