かけがえのないキミへ


親父にこんなこと言うなんて思ってもいなかった。
だけど言いたかったんだ。
素直な気持ちをさ…


そして目の前にエレベーターが止まり、ドアが開いた。
それに飛び乗る俺。
親父との電話は切り、
俺は走り出すんだ。

行くあてはない。
ただキミを見つけたいだけなんだ。


夏の空は好きだ。
見ているだけで気持ちが晴れる気がするから。

曇っていた気持ちが、
すっきりする気がする。

今の俺の気持ちは、
この空のように─…

屈託のない透明だから。

なぜか足はあの場所に向かっていた。
キミと出逢った場所。

いないかもしれない。
だけど確かめたいんだ。

息を切らし、額には汗を流しながら、一歩、一歩…近づいていく。


近くなる時計台。
高鳴りだす鼓動。



その時、
俺は見たんだ─…



高く上る、キラキラしたものを。



高く上る、
シャボン玉を─…



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