かけがえのないキミへ
小さくて可愛らしい声で、俺の名前を呼んだのは誰?
空耳かな、と自分を疑った。
綾音なわけない…
綾音は声を失った少女だから─…
俺は目を閉じて、落ち着かせ、再び歩いていく。
『怜…』
するともう一度あの声が聞こえた。
空耳なんかじゃない。
この声は…キミなの?
俺はゆっくりと後ろを振り返る。
そこには俺を見つめて立っている綾音がいた。
今にも泣き出しそうな顔をして…俺を見つめている。
『綾音…』
やっぱりキミだったんだ。
キミの声だったんだ…
綾音…綾音─…
耐えきれない俺の涙腺から、涙が零れた─…
その涙は太陽に反射して、七色に輝いたんだ…
『綾音─…』
『怜…愛してる…』
嘘だと思った。
奇跡かと思った─…
綾音の口から…
綾音の声で…
本当の気持ちを聞けるなんて。
綾音…愛してる。