かけがえのないキミへ


小さくて可愛らしい声で、俺の名前を呼んだのは誰?


空耳かな、と自分を疑った。
綾音なわけない…

綾音は声を失った少女だから─…


俺は目を閉じて、落ち着かせ、再び歩いていく。


『怜…』


するともう一度あの声が聞こえた。
空耳なんかじゃない。
この声は…キミなの?


俺はゆっくりと後ろを振り返る。
そこには俺を見つめて立っている綾音がいた。
今にも泣き出しそうな顔をして…俺を見つめている。




『綾音…』



やっぱりキミだったんだ。
キミの声だったんだ…


綾音…綾音─…


耐えきれない俺の涙腺から、涙が零れた─…


その涙は太陽に反射して、七色に輝いたんだ…



『綾音─…』





『怜…愛してる…』








嘘だと思った。
奇跡かと思った─…
綾音の口から…
綾音の声で…
本当の気持ちを聞けるなんて。



綾音…愛してる。



< 367 / 370 >

この作品をシェア

pagetop