かけがえのないキミへ
綾音にはなにかある、と悟ったのはあの時だ。
俺が送ると言ったのに、綾音は酷く拒んだ。
なぜあんなに拒んだのだろうか?
きっとなにかがあるんだ。
俺は家に着いてすぐ、使い慣れたベッドへとダイブした。
軋むスプリング。
疲れきった体。
あれから綾音からメールは来ていない。
寝たのかな?なんて思ったりもした。
薄い白色のカーテンからうっすらと映っているのは、寂しそうに笑っている三日月。
笑えよ?
腹抱えて、笑ってみろよ?
俺はネクタイを緩めて、天井を見上げた。
『はぁ…』
溜め息を漏らすと、余計疲れさが増す。
だが溜め息をつかずにはいられない。
こんな生活をしてるから。
目を閉じると綾音の笑顔が現れる。
やっぱりキミは可愛い。
ひんやりとしたフローリングの床に足をつき、寝る準備をする。