かけがえのないキミへ
でも俺は父親のことを憎んではいない。
確かにムカつくけど、自分が大人になるにつれ、父親の気持ちが何となく分かってきたから。
一人の女にしろ、なんて俺には出来ない。
折角、色気を使って俺を求めているのだから、俺はその要望に応える義務、あるだろ?
だからだよ。
だから俺は《彼女》を作らない。
季節は春。
俺は聖華《せいか》高等学校の三年生。
この学校はあまり校則はなく、どっちかというと自由な学校。
好きか嫌いかと言ったら、嫌いではない。
でも好きではない。
携帯の時計を見ると、今は17時40分。
俺は足早に駅に向かっていた。
『今日もいるかな?』
俺が何故こんなにも急いでいるのかというと、キミに会いたいから。
キミは今日も一人でシャボン玉を飛ばしているかな?