かけがえのないキミへ
もっと早く竜也の好きな人を気づいていたら、俺はもっと早く綾音に話しかけていたのに。
何で今?
何で今日?
全ての責任は俺にある、と感じた。
『怜ー?何やってんだよ?』
竜也が黒い傘を傾けて、俺を見た。
竜也の行動に不思議に思った綾音も、俺をゆっくりと見上げた。
綾音と、視線が重なり合う。
俺はそんな状況に戸惑い、視線を足元に落とした。
雨がローファーに弾き、雫がいくつもついている。
『…はぁー…』
小さくため息を零し、俺は仕方なく竜也と綾音がいる場所へと歩いて行った。
道路には沢山の水たまりがあって、俺はそれらを避けることなく、自ら水たまりの上を歩く。
『怜、俺の彼女のあやちゃん!』
竜也が綾音を紹介する。そんなの、要らないよ。だってもう…
俺は綾音を知っているから─…