共に行く者
孝一は確かに強くはないが、人を安心させる雰囲気を持っている。

癒やし系って言うのかな?

オレには持っていない力だ。

だからこそ、オレは孝一と一緒にいる。

オレが暴走しても、孝一が止めてくれるから。

強く言うんじゃくて、ゆっくりとオレの目を見ながら説得してくれる。

するとだんだん落ち着いてくるのだ。

「孝一ってさ」

「うん、なに?」

「オレの清涼剤だな」

「はっ? 何それ?」

「熱くなったオレを、冷やしてくれる存在」

目を丸くした孝一に向かって、オレは真面目に答えた。

「へぇ。何だか喜んで良いのかどうか、分からない答えだけど…」

「喜べよ。そんなヤツ、お前しかいないんだからさ」

オレは笑って再び孝一の頭を撫でる。

「そっそう?」

頭を撫でられることに戸惑いながらも、孝一も笑った。

こうやって2人だけで穏やかな時を過ごすのも、随分久し振りな気がする。

ここんとこ、落ち着かなかったしな。

バスはやがて、ドライブインに入った。

ここでは1時間の休憩となる。

「はあ。目的地まで、あと2時間はバスの中か…」

目的地は利実の希望に合わせた。

せめてそこまではワガママを聞いてやろうと、仲間で決めたからだ。
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