共に行く者
利実はギリッと歯を食いしばった。

「…じゃあアンタだけ恨んでやる」

「ああ、そうしてくれ」

「大ッキライ!」

利実は最後にそう叫ぶと、旅館の方向へ走り去って行った。

「やれやれ…」

どっと脱力感がきた。

体が重く感じて、近くの木に寄りかかった。

「お疲れ様、和城」

「うをっ! 孝一、何でここにっ!」

木の影から、孝一がひょっこり顔を出した。

「2人がこっちへ行くのを見かけて、こっそり追いかけてきたんだ。ここに隠れた時には、2人とも言い合いをはじめてて、注意がそれていたから…」

隠れて盗み聞きができたってワケか…。

「でも和城、本当に彼女の気持ちに気付いていなかったの?」

「お前は気付いていたのかよ?」

「割と早く…。彼女がグループに入って、1ヶ月ぐらい経った時だったかな? やたらと和城に話しかけるし、甘えたがっていたから」

「チッ。なら言えよ」

思わず舌打ちしてしまう。

「だって和城、恋愛苦手だろう? 言えば妙に緊張するんじゃないかって、思ったんだ。気まずくなるの、望まないだろう?」

「うっ…! まっまあな」

確かに当時、そんなことを言われたら、気まずくなっていただろう。
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