共に行く者
もう旅行は終わってしまう。

なのに変えることがどうしてもできない、焦り。

ここで騒ぎ出すのは意味がない。

余計にグループのメンバーに不興を買うだけだ。

恐らく、ここは大人しくやり過ごすだろう。

いつもの毎日に戻り、ほとぼりが冷めた頃を見計らって、またグループに入ろうなんて考えが、手に取るように分かる。

オレ達はあんまりにも利実を甘やかし過ぎた。

時には両親のように、時には兄や姉のように。

親友のように、親戚のように接してきた。

だがそれで利実をダメにしてしまった。

オレへの報われぬ思いがあるだろうが、何よりこの感情の名前を、オレは知っていた。

依存、だ。

利実も分かっていながら、どうしようも無かった。

オレ達に依存することを、止められなかった。

だからここで切り離すことをしなければ、その依存性は強い独占力に変わり、暴走してしまう。

これ以上、何かや誰かを傷付ける前に、切り離さなくてはならないのだ。

例えどんなに強い痛みを感じても…。

「和城、僕たちトイレ行って来るね」

「あっああ」

「先にバスに戻っててもいいから」

「分かった」
< 30 / 48 >

この作品をシェア

pagetop