共に行く者
すると2人は本当にいた。

人がたくさんいる表側とは違い、裏は静かで人気が無かった。

しかし突然、利実が孝一に抱き着いた。

「なっ!?」

そしてそのまま利実は背伸びを…って、マズイ!

「利実! お前何をやっている!」

声を出すと、二人はハッとしてこっちを向いた。

そして孝一が利実を突き飛ばした。

「きゃっ!」

「『きゃっ』じゃねーだろ? 昨日まではオレで、今度は孝一狙いか? それとも色仕掛けで孝一を利用したとしたのか?」

利実は突き飛ばされたものの、多少よろけただけだった。

すぐに顔を上げ、醜く笑う。

「…別に。アンタにはもう関係ないでしょ?」

「旅行が終わるまでは、口出せる立場だと思うがな」

孝一の腕を掴み、自分の背に隠した。

「和城…」

「くっだんねーことに、コイツを巻き込むな。いくら女だからって、容赦しねーぞ?」

怒気を含んだ眼で睨むと、利実はたじろいだ。

「ふっフン! くっだんない!」

そう言い捨てると、踵を返して表側に行った。

「はぁ…。…一体全体何でこうなったんだ?」

オレは深く息を吐くと、振り返った。

孝一は気まずそうな顔をしている。
< 32 / 48 >

この作品をシェア

pagetop