共に行く者
「本当にこれで最後だからって、2人っきりで話がしたいって言われたんだ」

「そしてのこのこ着いて来たら、いきなり色仕掛けをさせられたと…」

「うっ…!」

「利実は本当に悪巧みに長けているんだな」

呆れた方が良いのか、感心した方が良いのか、真面目に悩んでしまう。

「そして男がオレの他にも3人もいたのに、お前を選ぶところも小賢しいというか…」

「ゴメン、反省してる。でも例え色仕掛けをされたって、言うことなんて聞く気はなかったよ?」

「分かってるって。それにしてもなぁ…」

更に続けようと思った言葉だが、ケータイが鳴ったので中断した。

かけてきたのは仲間の1人だった。

ガイドさんがバスに戻って来て、そろそろ出発だと言っているらしい。

すぐに戻ると言って、電話を切った。

「もうみんなバスに戻って来てるって。利実も戻っただろうし、オレ達も行こうぜ」

「うっうん…」

それでも気落ちしている孝一。

まさかこんな手に出られるなんて、思わなかったんだろう。

ショックが大きいみたいだ。

オレは手を伸ばし、自分より幾分か低い孝一の頭を撫でた。

「わわっ!」

「いい加減、落ち込むのはやめろ。そんな顔でバスに戻ってみろ。仲間達が騒ぎ出すぞ?」
< 33 / 48 >

この作品をシェア

pagetop