共に行く者
利実が孝一を連れて行ったことは、仲間全員が知っている。

そこで利実が不機嫌に戻り、孝一が落ち込んだ様子で戻れば、トラぶったことが一目瞭然だ。

「ごっゴメン」

「お前のせいじゃねーって。それより笑えって」

オレは孝一の頬をぐいぐい引っ張った。

「うへっ!」

「お前の笑顔が、一番癒やしの力を発揮するんだ。だから笑えって」

「うっうん」

孝一は弱々しくも、笑みを浮かべた。

「うし! んじゃ、行こうぜ」

オレは孝一の手を掴み、走り出した。

「…変わんないね、和城」

「ん?」

「こうやって僕の手を引っ張ってくれるところ」

「嫌なら言えよ。すぐにでも放してやるから」

「ははっ。…もうしばらくは、このままで良いよ」

「…ああ」

駆け戻ったオレ達を、利実を除いた仲間達が不安そうに出迎えてくれた。

苦笑をして見せ、席に座る。

けれど窓際に座ってしまい、慌てた。

「あっ、お前窓際に座ってたよな? 変わる」

「いいよ。もうバス動き出したし、帰りぐらいは何とかなるから」

孝一は乗り物酔いをする体質だった。

だからいつも前の席の窓際に座らせていた。

この席順になったのも、孝一の乗り物酔いを防ぐ為だった。
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