共に行く者
「昔ほど乗り物酔いも酷くないしね。帰りは眠ることにするよ」

「そうだな。大分疲れたし…ふわぁ」

言っている最中に大欠伸が出た。

「旅行中は緊張してばっかだったからね。…また終わる時も一波乱あるかもしれないから、今のうちに休みなよ」

「…だな。お前も眠れるなら寝とけ。具合が悪くなったら、すぐに言えよ?」

「分かってるって。じゃあ、お休み」

「ああ…」

オレは座席に深く腰をかけた。

周りにいる他の乗客達も、眠りに入っている。

後ろからは何の話し声も聞こえないので、きっとみんな疲れているんだろうな。

そんなことを考えていると、右手にぬくもりを感じた。

「ん…?」

「やっぱり少し怖いから、手を握っててもいい?」

「ああ。好きにしろ」

「うん。…ありがとう」

孝一の笑顔と声が優しかった。

それは眠りに誘うには効果があった。

オレは孝一の笑みを見続け、手にぬくもりを感じながら眠りについた。
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