共に行く者
「…しろ、和城。起きて」

「んっん~?」

孝一の声だ。

そして体を揺す振られている。

オレは渋々眼を開けた。

「あっ、もしかして着いちまったか?」

「ううん、まだ…。とりあえず、止まっているって感じかな?」

止まっている?

ああ、信号か?

「なら席変わるか?」

「ううん、大丈夫みたいだからいいよ」

「ならどうした?」

眠っているオレを孝一が起こすなんて、珍しいことだった。

「うん…。みんな眠っているみたいだし、ちょっと話がしたくなったんだ」

周囲を見回すと、確かに誰もが眼を閉じている。

全員寝ちまったのか。

そんで孝一は寂しくなって、オレを起こしたのか。

オレは体の位置を直した。

「おう。んで、何の話をする?」

「長い話はできないんだけどさ。とりあえず、僕は幸せだったんだなぁと思って」

「ん?」

「和城と出会えて、僕は自分の世界が変わった。楽しくなったし、面白くもなった。世界がこんなに明るいものだって知った」

「…何暗いこと言ってんだよ?」

「暗いかな?」

「割とな」

でもそう語る孝一の表情は、今まで見た中で一番楽しそうで嬉しそうだった。
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