共に行く者
「僕はね、本音を言えばグループってあんまり好きじゃなかったんだ」

「おいおい…」

今、ここで言うことか?

下手すら連中に聞こえるぞ?

「でも和城が楽しそうだし、彼等は僕にも優しかったから、居心地は良かった。それは変わらないよ」

「そっか。なら良いんじゃね?」

「うん。でも正直なところ、僕はキミと2人だけでいたかった」

「…何言ってんだよ?」

「2人だけでも充分に楽しかったんだよ。和城は僕にとって、ヒーローみたいなものだったからさ」

そう言って照れくさそうに笑われると…オレも照れる。

「僕の世界に光をくれた人、明るくしてくれたんだよ。キミはね」

「そっか」

「うん。だから昨夜の誓いは本当に嬉しかったんだよ」

「オレだってその…」

孝一ってこんなに話すヤツだっけ?

いや、元々オレには話すヤツだったが、こうも自分の内面的なことを、打ち明けるヤツではなかったんだが…。

オレは夢でも見ているんだろうか?

ふと窓に視線を向けると…何だか景色がおかしい。

霧が外に充満している。

…帰るルートに、霧深い所なんてあったか?

これじゃあ視界ゼロに近い。
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