another story
「行こ、さゆりちゃん。」


「ほたるちゃん、そんなに急がなくても良いのに。」

さゆりちゃんはそう言って笑いながら、
私が引く方へついて来る。


「ほら、風が気持ちいいでしょ?」

私は柵の近くに立ち、伸びをして言った。


「そうね。
少し風が強いけどね。」

さゆりちゃんはそう笑いながら、髪に手をやる。
それでも“さゆりちゃん”の艶やかなくせっ毛を、風が弄ぶ。


さゆりちゃんは左手を髪に、右手を柵に載せ、空を眺めていた。


今、昨日みたいに背中を押せば。


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