君に恋した瞬間、
こういうときに、名前聞くか?
てか、何振った相手に名前聞いてんだよ・・。
「ほ、帆乃佳だよ・・・橘 帆乃佳・・・」
こいつも何答えてんだよ・・。
ほんと、マジ・・ありえねぇー・・・。
「そっか、じゃーな」
だんだん思考回路がおかしくなる前に、俺は橘から体を離した。
目もみず、足早に立ち去る。
はあー!!俺って、何!
何がしたいのっ!
乱暴に頭を掻き、苛つくように近くの壁を叩いた。
じんじんと痛い手。
だけどそれよりももっと、心が痛かった。
そう、あのとき一瞬だけ・・。
杷仔を忘れていたから。