初恋。
「手袋、手袋、あっ」
冷たくなった指先が、うまく動かずカバンから手袋が落ちてしまった。拾うとも暗闇だからあまり見えない。するといきなり目の前に手袋が現れた。
「はい、どうぞ」
優しい声だった。見上げると男の人が手袋を差し出していた。暗闇でも笑っていることだけはわかったんだ。彼は微笑んでいた。優しい目を私に向けて。
「あ、ありがとうございます」
手袋を受け取ると男の人はペコリとお辞儀をした。それから彼は静かに去って行った。
これが私と彼が初めて出会った日だった。