ラスト・ラン 〜僕らの光〜
プロローグ





後ろで、母親が子を呼ぶ声がした。

呼ばれた子は無邪気に笑顔を浮かべて、「お母さーん」と大声を出しながら母親の元へと走っていく。

そんな光景を、青柳凛子はじっと見つめていた。

二人が公園を去ると、凛子は赤いシャベルを握りしめ、砂場の穴掘りを再開した。

ただ目的もなく掘り続けた。

やがてシャベルが硬いものに当たる音がし、穴の中を覗くと砂ではなくコンクリートが見え、それは穴掘りの終わりを告げていた。

凛子はシャベルをその中へ放り投げた。

カチン、と金属音が響いた。

そしてそれを埋めるように砂で覆い隠した。

そのシャベルは今日凛子の母親が買ってくれたものだった。


「凛子。このシャベルあげるからいい子にして公園で待ってなさい。後でお母さんが迎えにいってあげるから」


言われた通りずっと公園で待っているが、母親と別れてから既に五時間以上が立っており、空が暗くなっても母親は迎えに来なかった。

辺りに、人の姿はない。

公園で遊んでいるのは凛子一人だけだった。


「お母さん、まだかな」


ぽつり、と小さく呟いて夜空を見上げる。

たくさんの星が瞬いている。


きれい。


きらきらしたものが好きな凛子はオモチャの宝石やネックレスなどをよく集めていた。

星はそれ以上に輝いている。
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