ラスト・ラン 〜僕らの光〜




──お前に一つ頼みがある。





その頼みとは、少しだけ体を貸してほしいというものだった。

ドラマでよくあるような話だが、まさか自分が本当にそのような体験をするなんて思ってもいなかった。

この公園に入ってすぐに前田と入れ替わった。

いや、入れ替わったというよりも前田が俺の体に入ってきたといったほうが正しいだろうか。

俺と前田の意識が体の中で同居している。

そんな感じだった。





それにしても。



前田が入ってきた瞬間、その想いが体中に伝わり俺はやりきれない気持ちになっていた。

やっぱり、こいつは青柳のことを──────────。






「おい、三浦」


ふいに、耳の奥で前田の声が響いた。


「もう少しだけ体借りていいか?」


前田の気持ちは分かっていた。

斗真は頷く。


「悔いのないようにしろよ」


少しの、間。

前田はいった。


「…ありがとう」

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