ラスト・ラン 〜僕らの光〜
「斗真…」
母が玄関まで追いかけてきた。
斗真は振り返らず、靴に履きかえる。
「あのね、斗真…」
母の声が震えている。
長い、長い沈黙。
心の中で葛藤が芽生える。
俺はまだ母を許してはいなかった。
この先もずっと許すつもりはなかった。
それでも伝えたいことがあった。
「母さん」
斗真は立ち上がり、背中を向けたままいった。
「俺を産んでくれてありがとう」
扉が閉まる時、ごめんね、と母のすすり泣く声が聞こえた。