ラスト・ラン 〜僕らの光〜

「お前、大丈夫か?」


斗真は目を疑った。

振り返ったそこには、なぜか前田の姿があったからだ。

心配そうに眉を寄せて丸っこい瞳で、じっと斗真の顔を見つめている。

まだ学生服の格好で鞄を持っているところを見ると、この道は前田の通学路でもあることを知った。


「…大丈夫だよ。気にすんな」


と斗真は小さく答える。

それから鍵を開け、家に入ろうとするが、前田がいつまでも門の前から離れないことが気になった。


「じゃあな」


そういうと、前田は軽く手を上げ、やっとその場から離れる。

と思ったら、四、五歩歩いたところから走って戻ってきた。


「…なんだよ」


前田は何か言いたそうにそわそわとして落ち着かない様子だった。

そして、


「さっきのセダンに乗ってた女の人、三浦のおばさん?」


あまりにも単刀直入な質問に、斗真は驚きを通り越して呆れた。

正直なところが前田の長所だが、たまにそれは欠点にもなった。


面倒な奴に見られたもんだ。


ここで嘘をついても仕方がないと思い、斗真は頷いた。

前田の表情が曇る。

しかしそれは、一瞬だけですぐにいつもの笑顔に戻った。


「体調、大丈夫か?」


前田が訊いた。


「ああ、なんてことないよ。ちょっと気持ち悪くなっただけだから」

「そっか」

「悪い。嫌なとこ見せちゃったな」

「なに謝ってんだよ。それより今からいいとこ行くんだけど三浦も一緒に来ねえ?」

「え、」

「ついて来いよ」


斗真が断る暇もなく、前田は走っていってしまった。

あまりにも強引な誘いにあ然としながら、斗真は仕方がなく彼の後を追った。
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