ラスト・ラン 〜僕らの光〜
どこに向かうかも分からず、前田の後を追って十分。

お互い無言で、静かな時間だけが流れていた。

そしてそれから十五分が過ぎた頃、目的地に辿り着いた。


「ここが"いいとこ"」


前田が指した場所は地元で有名な、川沿いにあるサイクリングロードだった。

川の向こうで夕陽が輝いている。


「俺、毎朝この辺りジョギングしてるんだけど、最後は必ずここに寄るんだ」


そういって、前田は川縁に腰を下ろし、ゆっくりと目を閉じながらいった。


「精一杯走った後に、こうやって耳をすましながら自然の声を聞くのが好きでさ。川の流れる音だったり、鳥が鳴く声だったり…。走り終えた達成感が味わえる場所っていうか、ゴールにどことなく似てるんだよ。テープを切った瞬間に歓声が上がる時のと一緒で。あの瞬間が好きだから、俺は走ることやめられないんだ」


斗真は前田から目を離せないでいた。

陸上のことを話す前田の表情はとても輝いていて、全てが充実しているように見えた。

斗真はそれを羨ましく感じ、時には彼を妬むこともあった。
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