ラスト・ラン 〜僕らの光〜
ふいに、生暖かい風が優しく吹いた。


「早く来いよ」


前田に促され、斗真は彼の隣に並ぶ。

目の前は空が大きく広がっている。

ゴールまでの距離が短く感じた。


「三浦。自然と調和することを意識しながら走ってみろ」


斗真は苦笑いをしてみせた。


「難しいこと言うなよ」

「全然難しいことじゃねえよ。純粋に走ることを楽しむことだけを考えてればいいんだから。そしたら、自然と調和できるよ」


にっ、と笑う前田の笑顔は相変わらず少年のようだった。





「よーい」


スタート直前、斗真はゆっくりと目を閉じる。

風が背中を前へと押してくれているような気がした。

まるで頑張れ、と応援してくれるみたいに。


前へ。


前へ、と。






────「ドンッ!」




合図と同時に、

斗真は思いっ切り地面を蹴った。



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