ラスト・ラン 〜僕らの光〜
わざとらしく肩をすくめる前田に、斗真は吐息をついた。


「魂胆丸見えなんだよ。じゃあな」

「おいおい待てよ、三浦」


帰路に戻ろうとすると、前田に行く先を阻まれる。
あまりにしつこいので斗真は苛立ちが募った。「どけよ、邪魔なんだよ」


「夜メシ、作ってやっただろー」

「お前じゃなくてお前の母親が作ったんだろうが」

「じゃなくて陸上部のことはゆっくり考えててくれればいいからさ。とにかくいつでも俺の家に来いよ。なっ。あっ明日一緒に帰ろうぜ、絶対だぞ」


有無を言わせない物言いにたじろく斗真の肩をポンポンと叩くと、前田はそそくさと帰っていった。

まるで嵐が過ぎ去った後のように、斗真は呆然と彼の背中を見つめた。

前田の意図が全く分からない。

ただ彼の言葉がやけに引っかかっていた。


──だからさ凛子もいるし。遊びに来いって。なんなら毎日でもいいぞ。


やけにそこだけ意味深に聞こえた。

まさか前田の奴、俺の気持ちに気が付いているのか?

そこまで考えて斗真は首を振った。

まさかな、と腑に落ちないでいたが帰路を急いだ。
< 33 / 121 >

この作品をシェア

pagetop