ラスト・ラン 〜僕らの光〜

「三浦君、教えるの上手ね。すごく分かりやすい」

「そうかな」


斗真の得意科目は数学。

青柳も斗真と同様に学年で常に上位の優秀だが、数学だけはどうしても苦手だという。

彼女に乗せられて、斗真はまんざらでもなかった。


「はーっ。優等生はやっぱり違うねぇ。俺にはさっぱり分からないや」


とっくの昔にギブアップした前田は参考書ではなく、漫画を捲っている。


「隼平も三浦君に教えてもらいなさいよ。先月の試験、赤点だったんでしょ」

「俺はこの足さえあればいいの」

「どんなに陸上部の実績があっても他の成績があまりにも悪かったらどこの大学も推薦とれないわよ」

「大丈夫だって。俺の俊足に勝る者はなーし」


陸上バカ、と青柳は呟くようにいった。

前田は陸上でスポーツ推薦を受けるつもりなのか。

確か去年の県大会で優勝した実績が彼にはある。

まだ一年先とはいえ、将来のことを考えているんだなとしっかりと目標を見据えている前田を少しだけ見直した。
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