ラスト・ラン 〜僕らの光〜
夜道を照らす星は今も輝いており、凛子はずっとそれを見上げながら歩いていた。

まるでプラネタリウムの中を歩いているみたいだねと隼平にいうと、彼は口元に小さく笑みを浮かべた。

公園から歩いて十五分ほど離れたところにある住宅街に隼平の家があり、その向かいに凛子の家があった。二人は、いわゆる近所の幼なじみという関係だ。

"前田"と表札が掛けられた玄関に着くと、凛子は振り返った。

凛子の家の電気はついていない。

こんな夜中に一体どこに出かけたのだろうと思った。


「ねえ、隼平。お母さんどこに行ったの?」

「さあ」隼平は素っ気なく答えた。

「迎えに来るって約束したのに……。お母さんの嘘つき」


凛子はぎゅっと下唇を噛んだ。


「凛子、見ろよ」

「え?」


その時、甘い香りが過ぎった。

隼平が差し出した手の平の上に、星の形をしたお菓子がたくさん転がっている。


「こんぺいとう。星みたいだろ。本物の星は掴めねえけど、これで我慢しろよな」

「わあ、おいしいっ」


口の中に砂糖の味が広がる。

すっかり機嫌を良くした凛子を見て、隼平は優しい目をしながら白い歯を零した。
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