ラスト・ラン 〜僕らの光〜

前田の気持ちが分からない。

ただ一つ分かったことは前田は斗真が青柳に好意を寄せていることを絶対に知っている。

デートに誘った時点で誰にも分かることだと思うが、前田は恐らくそれ以上前から知っていたに違いない。


「おい、前田」


出口に向かう前田を呼び止める。


「本当にいいんだな」


昼時だからか来店したときより店内は賑わっていた。

斗真と前田の間に沈黙が漂う。

やがて前田は口元を上げて親指を立てた。


「俺の妹だかんな。大事にしろよ」


雑居ビルの中にあるそのカフェは二階にも座席がある。

奥のカウンター席に青柳の姿が見えた。
手鏡を見て髪を整えている。


「あっ三浦君。ここ、ここ」


斗真に気付くと、青柳は微笑んで手招きをした。

その笑顔で前田の言うとおり、本当に男と二人でいることに慣れていないだけで自分が嫌われているわけじゃないことが分かり安心する。
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